シルフル小説 リオ編1話
 

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某日深夜 あわただしい中警察が規制線を張り取り囲む雑居ビルがあり

数名がビルを占拠し立て篭もっていた

駅近くの華やかな商店が並ぶ大通りから一本 二本と道を外れていくとたちまち様相が変わっていく

バーや風俗店が並びさらに路地を外れれば治安も悪くなり中には警察が目をつけているような店もある

この雑居ビルもそんな場所に立っていた

事件現場は騒然とし次第に援軍の警察車両が集まりだしている その中にいかも場違いな面子を乗せた警察車両があった

「まったく こんな時間に呼び出しなんて 税金泥棒の職務怠慢もはだはだしいわね!」

っとその車両の助手席に座る紫色の髪をした少女が愚痴を発した

彼女は髪の毛は肩までくらいで前髪はそろえている 近くの中学校の征服を着てこんな夜中というのにもかかわらずサングラスをかけていた

彼女の名前は『時音 夕(トキネ ユウ)』 はたから見れば補導された少女だが

この事件を解決するために 必要と見込まれた人物の一人である

「まあそういってあげないでよ 一般警察には荷が重過ぎる事件みたいだし」

助手席の真後ろからメガネをかけた黒髪の男が話しかける

彼の名は『江戸 和人(エド カズト)』肩までの髪を後ろで束ね いかにも普段着というポロシャツにジーンズ姿

年齢は20代後半 いつも人当たりのよさそうな笑顔でいる彼はこの事件を解決するため召集されたメンバーの責任者である

そしてこの隊にはもう一人 和人の隣で腕を組み目を閉じうつむく青い髪の男がいた。

「運転手さん いつになったら目的地につくの? 私は暇じゃないんだけど!」

突然の呼び出しへの苛立ちを 夕は運転手にぶつける 

このよくわからない3人を運ぶために派遣された警官 年齢は30代半ばあたりで

きっちり征服に身を包むいかにも平凡な公務員生活を送ってきただろう運転手の彼は貧乏くじを引かされたとの言い回しがしっくりくる

「後20分位で着くとおもいますよぉ・・・」

運転手は夕の迫力にたじたじになりながら 自信なさげにつぶやく

「20分!?長い・・・裏緒(リオ)何か面白い話でもない?」

夕は後部座席の青い髪の男に向かってそう投げかけた

夕が裏緒と呼ぶこの男の名は『シルフ 裏緒(シルフ リオ)』シルフという変わった苗字は祖父のもので在り

血筋の四分の三は日本人であるためクオーターと言うことになるが 

残りの一のシルフの名を持つ祖父の出身は孤児であったたクオーターかも定かではない

20代近くで髪は長く首あたりで結い膝あたりまでの長さがあり長身で顔立ちもいい 

黒いシャツにジーンズその上に薄手の白いコートを着ており手には筒状の長いケースを持っている

このコートは黒いラインがいくつか入っており彼らの隊を示すマークも入っている制服である

他の二人も同じ隊であるが着ていないのは緊急時というわけではなく普段からでありこの隊の規律の薄さがうかがえる

そして手に持つケースは釣竿などを入れるのに適した長い筒状の物であり 彼の入れているものは得物と言う言い方がしっくり来る代物だ

「面白いかどうかは分からんが 話題ならあるぞ」

「本当!?どんな話題 あるなら早く話してよ」

裏緒の答えに夕はこの退屈な状況を覆す期待を込める

「話題とは今回の事件の詳細についてだ まだ立てこもり事件が起こった事くらいしか聞いてない」

裏緒は隊の責任者である和人の方を見てそう言った 夕は仕事の話と知るやしかめっ面で正面を向いたあと退屈そうに窓のほうに目をやる

「では二人には今回の事件について話しておこうかな」

そう言いながら和人は資料を取り出し事件の詳細について話し出す

「今回の事件は駅近くにある裏通りの雑居ビルで立てこもり事件が発生したんだよ

事の発端は麻薬の取引現場を押さえるため警官が事件が起きた雑居ビルに突入したみたい 

売人の逮捕には成功し残りの取引相手も逮捕したんだけど 

そこには想定外なことに上級の※能力者※が率いるグループがたまたまいたんだ 彼らは逮捕を拒み大暴れ その結果警察一人が殉職し

売人を含めた数名が重軽傷を負ったらしい

そして現在は雑居ビル内部にっそのグループが立てこもり警察とのにらみ合いになってるらしいよ 

警察も能力者相手にはうかつには内部に突入できず

犯人も出るに出られないそんな状況なんで 僕らに頼らざる終えなくなったわけ」

能力者とは30〜40年前以降から生まれた子供の中に特殊な力を持っているものが現れだした

水を自在に操ったり 手から鉄を生み出したりなど今まででは考えられないような力を持って生まれた人間 その総称を言う

能力者は地球全土わたり生まれた 当初は神のように扱われていたが現在では能力の強弱問わぬなら

3人に1人の割合で生まれているほどメジャーである

そして今では能力者の研究解明が進み その人物が持つの能力をある程度解析できる機械も発明され 能力者と診断されたものは

国にその能力を登録し二年に一回の検査で更新が義務付けられている 犯人が上級の能力者と分かったのもそのデータがあるためであった

そしてこの事件に招集されたこの3人も能力者で 能力者の犯罪専門の警察官なのである

「立てこもりの主犯は男性で 名前は「遠山」 29歳で火を操ることのできる能力者 かなり強力な力をもってるみたいで

他の犯人も上級とまではいかないけども同じく火を操ることができるみたい そして同じ能力を持つもの同士でグループを組んでたみたい」

「火を操るなんて・・・恐ろしい能力ですね・・・」

和人の話に運転手がおびえていた

「火なんて下等能力!役にも立たない使えない力よ!」

強い口調で夕が割り込んできた 運転手はその言葉に謎めいた表情を浮けべて居る そこへ

「火を操る能力は火は操れても それが発する熱はあやつれないから使ってる本人も火傷しちゃう可能性が在るんですよ」

運転手の疑問を解くべく 和人が説明に入る

「火傷しない為には 火を遠くで操る必要があるけど 能力者から離れるほど操れる量が減り力が発揮できないんだ

さらに 火は自ら生成するとその熱で火傷してしまう 危険なため別で火を用意する必要があるんだよね」

そこへ裏緒も付け加える

「さらに言うと 熱自体を操れる能力者の方が熱による火傷を防げ熱により発火も起こせるので火の扱いには長けている

破壊力は火薬などを生成できる能力者よりも火を操る能力者は劣る 世の中には火炎放射器なる武器もあるしな」

「なるほど・・・ なので微妙な力なのですね・・・」

運転手が納得する

「ただ 能力者には稀に2ツや3ツの力を使えるものも居て 火はかなりの他の能力と相性がいいんだよね

火と熱が使えたら熱をコントロールして自分が焼けどしないようにできるので火を出し放題になるし 

火と風が使えたら僅かな火種を風で舞い上げどこでも火災旋風が起こせたりとか・・・」

和人がそう話すと運転手はまたおびえだす

「どちらにしろ兵器にしかならない能力よ!」

夕の言葉により周りが静まる 能力者は力の使えないものから見ればうらやましい物だか その分風当たりも強く

強い能力を持つものほど 疎ましく思われたり あらぬ噂が立つなど 世間の目が厳しい

思わず夕が発した言葉は心無い者から言われる言葉 

本心では無いにせよ風当たりの強い能力者の地位を下げ 

その地位を上げようとしてる者を冒涜する犯人に対しての苛立ちを言葉にしたものであった

「・・・ところで皆さんも能力者なんですよね どんな能力をあつかえるのですか?」

運選手が場の空気を換えようとそう切り出したが裏緒は

「知らないほうが今後平穏に暮らせると思うが・・・」

そう神妙に警告を発した

「夕ちゃんは触った物と同じ物を操れるんだよね」

しかし和人が口を滑らす

「和人・・・あんた今裏緒が言ってたこと聞いてた?」

呆れた様子で夕が答えたが 聞いてしまった運転手は気が気ではない

「まあ 内部でも知りたがらない方がいいこともあると言っただけだ・・・ 今の程度では問題ないだろう」

裏緒の言葉に運転手は多少落ち着きを取り戻したようだ

「そろそろ目的地に着く時間ではないか?」

運転手に対して裏緒はさらに投げかける

「あ!はい! そこを曲がればすぐです」

このいやな空気から開放される喜びか運転手はホッと一息つく

「あーかったるい 早く終わらせて帰りましょう」

「そうだね〜仕事はさっさっと終わらすに限るよね」

夕も和人も実に能天気な言い方であったが 緊張をほぐす為明るく振るまっていたものであろう

そして警官たちが騒然とする中に静かに車は止まる シートベルトをはずし

辺りの空気のせいか普段より重たく感じるドアを開けゆっくりと車を降りた

そして三人は歩き出し警官隊の中に3人は消えていった。

 

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