シルフル小説 リオ編2話
 

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警官隊が物々しく動く立てこもり現場

警察が敷く規制線の範囲は半径300mといった辺り その範囲内の一般市民はすべて退去となっている

マスコミなども現場を撮影することは許されていない 表向きには能力者には様々な能力があるため

一般市民への被害を極力抑えるためとしている

実際は警察側の能力者の素性が漏れるの抑える為にあり 犯罪組緒などに情報が漏れれば能力に対策を立てられたり

能力者本人にも危険が及ぶ可能性が考えられるためである 

他には能力者関連の犯罪は犯人が死亡して終わることが多々あるため 能力者がたとえ羽交い絞めにされようが意識がある限り

能力を使るため やむ終えずそうするしかないためであり 犯人の死亡する映像などを撮られ警察の評判が下がるのを防ぐためでもある

そして一般市民が退去し終わった中 犯人が立てこもる雑居ビルの向かい側に手ごろな建物を借り警察は拠点にしていた

「・・・の手配は完了したか ビルを囲む警官の配置の状況は?そうか では後は到着を待つだけだな」

そこには今事件の指揮をとる一人の警官の姿があった 彼の名は『矢部 歩(ヤベ アユム)』

年齢は30代近場で若くして県警の課長クラスまで出世したエリートで威厳の漂う鋭い目付きをした男である

「矢部警視 江戸(エド)警部らが到着いたしました!」

報告に来た警官の脇から和人(かずと)が手を振りながら軽い口調で話しかけた

「矢部警視お久しぶり〜 大変なことになってるね〜」

その後ろから裏緒(リオ)夕(ユウ)が会釈する

能力者関連の事件になれば江戸 和人と矢部 歩は顔を合わすことになる 能力者の起こす事件は重大事件のため

県警本部よりエリートの矢部が派遣され 解決の主力として能力者の和人らが派遣されるためだ

現場の重い空気に緊張感を漂わせる矢部 それに対して場違いに軽い和人

二人の会話は周りの警官からすれば見ているだけで疲れるだろう

「江戸刑事ご足労感謝する 早速事件の状況について説明に入りたい」

矢部は和人の振る舞いもどこ吹く風と気に留めず皆を座らせ 事件の詳細についての説明に入る

「現在立てこもっている能力者は主犯の遠山(トオヤマ)を含めた7名が確認されている

しかしさらに確認されていない数名も立てこもって居る可能性もあり

現在遠山が創ったグループの人間を捜索し事件に参加について洗っているが

状況においては人数の確認が取れないまま突入してもらうことにもなる」

「裏緒君何か問題ある?」

矢部の説明に対し和人が裏緒に問いかけた 裏緒はこの事件を解決するための主力であるためだ

「いや 問題はない」

相手の人数など気にも留めてないようすで裏緒は返事をかえす そこへ矢部が提案を一つ持ちかける

「今回突入にあたりこちらも特殊隊員を数名援護につけようと思うがどうかな?」

特殊隊員とは銃火器の訓練を受けた警察部隊のことである 

そもそも立てこもり事件などは特殊隊員で構成された特殊部隊での解決が考えられるが

現在は能力者への研究の産物として人工的に能力を持たせた品があり 空気の幕を作り銃弾の威力を弱めるものから

非常に頑丈なボディーアーマーなどが開発され 並みの銃火器では火力不足に陥っている

爆発物等は施設なども破壊していまい 自らも危険が及ぶため使えず 有効な方法が限られ能力者に頼らざる終えない状況になっていた

「提案は有難いですが 俺の力は周りすべてに影響がでてしまうため遠慮させてもらいます」

裏緒は矢部の案を丁重に断った 能力者のことについては管轄外の矢部は引かざるおえない

「君が何時も単身で現場に突入するのにはそういう意味合いがあったわけか 

単に人材不足と思っていたがお節介だった用だ」

皮肉にも聞こえかねないが 裏緒に対しての矢部なりの配慮なのであろう

解決にあたり3人の役回りは裏緒が突入し 夕が外からのサポート 和人は2人が立ち回り易いように必要な物を手配する形になっている

実質二人で2〜30名の能力者を相手に出来る故に10代であるにもかかわらず警察に所属し重用されている

和人も能力者ではあるが能力が戦闘向きではない為に事件解決には直接参加してはいない

「特殊隊員もいいけど こっちが頼んでおいたものは手配できてるの?」

年齢が倍以上離れている矢部に対してでも 夕はいつもの口調で敬語など無く問いかける

「もちろん手配できている 今ここに持ってこさせよう」

そういうと矢部は部下に指示し用意した物を持ってこさせた

部下の警官はテーブルの上にジッパーで密封されたビニールを並べた

その中身と言うのは髪の毛であった

「これ 立て篭もっているやつらの物で間違いないわよね?」

夕か矢部にそう問いかけると矢部は鑑定書を広げて

「間違いない 鑑識のお墨付きだ」

矢部は犯人の身元が割れるや否やすぐさま人を手配し頼まれる前にすでに準備をしていたらしい 

「しかしこれの使い道を始めて聞かされた時はおどろいた」

犯人の住処を割り出し髪の毛を集める 捜索など行うためには様々な手続きが要るため矢部は最初にこのことを頼まれたときは

かなりの時間を要してしまっていた それが許せなかったのか今では和人らが到着する前に手配を終わらせていた

そしてその髪の毛の使い道はというと

「まあ 普通は驚くでしょうね 髪の毛とか体の一部があれば人を操れるなんて」

そういうと夕は腰のポシェットからわら人形を取り出しそこに犯人の髪の毛を詰め始める

夕の能力は触った物と同じ物質に影響を与えられるというもの 髪の毛のDNAを介して相手を操ることが出来る

能力が影響をもたらせる範囲は半径100m 能力者の中でも軍を抜いていて範囲内なら多数の人数でも操れる

ただし能力を持つものはそれに抵抗することが出来るため 数人相手となると動きを止める程度にとどまり

一定以上の強さを持つものは操ることができない

範囲内に操れる対象が居ればその位置の詳細も分かり裏緒が突入する際の大きな手助けになっていた

別にわら人形でなくとも人は操れるそうだが 彼女にとってはわら人形を使うのがもっとも操りやすいらしい

「さて お仕事開始しますか!」

そういうと夕は目を閉じ一呼吸しわら人形に手に軽く念じる

そしてしばらくすると再び目を開け

「・・・犯人が立てこもってる雑居ビルの見取り図!」

っと用意していて当然と言わんばかりに夕は注文をつける

「ここにある 使ってくれ もちろんペンも用意してある」

矢部もまたそう来るだろうと すぐさま見取り図を取り出した 書き込むためのペン付で

夕は見取り図の前に座り 用意されたペンを握って

犯人の髪の毛によりその持ち主の居場所を割り当てたものを見取り図に書き込みだした

「・・・入り口付近に2人 階段に1人 奥に・・・」

見取り図によればこの雑居ビルは5階建てでその内の1階2階はバーになっているらしい

広さで言えばコンビ二より一回り広いくらいで 各階20人以上の客を入れられそうだ

「3階から上はずらりと個室が並ぶ妙な構造になっているな?」

裏緒が脇から覗き込みながら疑問を問う3階より上は受付のような開けたスペースが少しあり

そこからずらりと個室がならぶという設計になっている 宿にするならベッドを置けるほど広くはなく

漫画喫茶にしては物を並べているスペースがない 特に4階5階は階段から奥はすべて個室が並ぶ妙な設計である

「この構造こそが今回の事件の発端になったと言うところだ」

裏緒の問いに対し 含みを持たせた言い回しをする矢部

「もったいぶらずにさっさと説明しなさいよ」

夕も興味があるらしく矢部の答えを急かす

「麻薬を使用する為のしせつだ」

単調直入に矢部は語り出した

「表向きはバーという形で経営し 裏では麻薬の売買および使用という違法取引を行っており

今回警察が摘発し乗り込んだというわけだ 遠山らの能力者は5階の個室で麻薬使用中だったらしい

まさか能力者が団体でいるとは麻薬取締り係の連中も思わなかったようだ」

能力者1人なら取り締まりに入った警官だけでなんとかなったかもしれない

たとえ敵わないとしても殉職者まで出す結果にはならなかっただろう

「・・・っでその尻拭いを私たちがやる羽目になったわけね

犯人の配置は書き終えたわ せめてこれ以上ことが大きくなる前にさっさと終わらせましょう」

夕なりの気を回した言葉だろうか 体をなしてはいないが殉職者まで出してしまった係りの心痛は感じているようだ

見取り図を元に突入についての段取りについて話し合われる 夕が相手の動きを止め裏緒が犯人を戦闘不能にするという

何時ものやり方ではあったがそれにまとまり 犯人の配置を頭に入れると裏緒らは突入の準備に入

持ってきた筒状のケースから愛用の刀を取り出した もちろんただの刀ではなく能力者が使うことにより

刀の範囲を超えた力を持つ代物である

そして耳に小型の通信用のイヤホンマイクを取り付ける 夕も同じ物を取り付けていた相手の位置などの情報が

これにより随時報告される 怪しい行動などをとられても筒抜けというわけだ

「さて 行こうか」

裏緒がそういい席を立つ 夕 和人も共に現場に向かい席を発った

「・・・ここから先は私には見守ることしか出来ないが 健闘を祈っている・・・」

矢部は戦場とも呼べる場所に向かう3人の背中にそう投げかけ祈りをささげた

 

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